はじめに
弊社の取り扱うエスカレーターの手すりのラッピング広告。
これは一体どの広告分野に位置するのでしょうか。
それを知っていくためにも、まずは広告の中でも歴史の長い「屋外広告」について学んでいこうと思いました。
今回コラムを執筆するために屋外広告を調べていくと、大変奥が深く、いつの間にか全5回の記事になってしまいました!
屋外広告は普段の生活から街中でよく目にすることも多いかもしれませんが、第一弾はその歴史や具体的な種類などを探っていきたいと思います。
日本の屋外広告の始まり
最も古くからあるプロモーション形態の一つである屋外広告は、広告主が公共の場で自社の製品やサービスを宣伝するために利用されてきました。
ではそもそも、日本ではどの時代から始まったのかでしょうか。
記録が残っているものですと、おおよそさかのぼること飛鳥時代。
701 年に発令された『大宝律令』の改訂版で ある、『養老律令』(718年)の解説書である「令義解(りょうのぎげ)」(833 年)の「関市令(かんしりょう)」にこのような制度があったと言われています。
当時の都である藤原京の東市と西市に立ち並ぶ店が、「標し(しるし)」と呼ばれた看板を立て、商品名を明記する規定があったとされています。
「市場では同種類の商品ごとに立札を立てて、その商品の取り扱い業者である旨を記載せよ」といった内容だったようです。
日本では、この『養老律令』の中の広告の決まりが最も古いものとされています。
また『土佐日記』(935年)を執筆した「紀貫之」が、長岡京の玄関口として栄えた山崎の地にて見かけた、「小櫃(おびつ)の絵看板」と「大きな釣針の実物模型看板」について明記している箇所もあり、当時から絵や模型による屋外看板が軒先に設置されていたことがうかがえます。
ただ日本国内において広告に関する資料や物的証拠が残っているものが少なく、
上記の2説は通説とされているそうです。
(国立国会図書館レファレンス共同データベースより参照)
屋外広告の種類
では、現代の日本に戻りましょう。
今、実際に街中で使用されている屋外広告にはどんな種類があるのでしょうか?
●屋上広告
建物の屋上にある広告塔や広告板のこと。面積が大きく高さもあるので、遠くからでも視認しやすいのが特徴です。主要な駅や交差点の近くのビル屋上に設置される傾向がありています。
●壁面広告
建物の壁に大きく設置された広告のことを指します。看板などに比べるとより面積が広く、距離が近くなるほど目に入りやすくなります。近年はデジタルサイネージを利用した動画タイプのものも見受けられます。
●突出し看板
建物の屋上や壁から突き出した形で設置される看板のことを指します。規制の関係で面積は広くできませんが、歩く際に目に入るような位置に設置されるので、主に店舗への誘導に使用されます。
●電柱広告
電柱に設置された広告のことを指します。巻き付けるなどして広告が取り付けられ、電話番号や住所の記載により、その設置した電柱の近隣住民へのアピールに効果を発揮します。
●建植看板
自立看板、ポール建植看板と言われるものです。地面にポールなどを立てて設置します。店舗への誘導や案内がメインになります。
●旗広告
商業施設などの壁面に掲げられる垂れ幕式の広告のことです。季節ごとの大きなセールやイベントの告知に使われており、その施設への集客・宣伝、ブランド価値を高めのるに大変効果があります。
●吊り下げ看板
天井から吊り下げるタイプの広告です。駅構内でよく見られ、電飾を用いて視認しやすくなるよう工夫されています。宣伝だけではなく、経路案内や駅名がわかるように設置されるケースが多くあります。
●アーチ、ゲート看板
門の形をした広告です。建物や商店街の入り口に設置されているケースが多く、常設での使用が多いですが、商店街のフェアやセールなどのスポット広告としての利用も可能です。
●立看板
会場や店舗出入り口付近に設置される看板です。入店の誘導によく使用されます。最近は立看板の設置に対する規制が強化されているので、設置場所には注意が必要となっているそうです。
●アドトラック
人の目を引くようなデザインの大きなトラックを、都心部などで走行させる移動広告です。渋谷などの人の多く集まる地域では大変効果的です。アーティストのCDやアルバムのプロモーションで曲や映像を流しながら走行しているのをよく見かける印象があります。
海外の屋外広告の紹介
それではここからは打って変わって、海外の屋外広告について紹介していきます。
現存する世界最古の広告は「Encyclopaedia Britannica」によると、古代エジプトのテーベの遺跡から発掘された紀元前1,000年ごろパピルスの広告で、ロンドンの大英博物館にその現物が保管されていると言います。
パピルスに書かれた内容は、「逃亡した奴隷シェムを連れ戻してくれたら、お礼に金鐶を差し上げる」と手書きされていたそうです。
(国立国会図書館レファレンス共同データベースより参照)
また、屋外看板については、日本でいうところの弥生時代である、紀元前6世紀頃のイタリアのボンペイ遺跡においては、今日の原型とみられるものが残されております。
ベスビオ火山の噴火により、ポンペイで生活していた人々は火山灰に飲まれ、地中に埋まってしまった人々の遺体や、住居跡など生活の痕跡をたどることができます。
火山灰に埋もれたことで、遺跡の保存状態が非常によく、当時の人々の生き様が見て取れます。
当時ポンペイは交易が盛んで、遺跡のそばの海から言葉の通じない外国人たちが多く訪れていました。
その際に、壁面に描かれた絵や看板などを通して、お客たちに絵で指し示してもらい、何が欲しいのかわかるようにしていたそうです。
(上図は酒場の写真だそうです。今でいう、バーカウンターだったのでしょうか?)
こうやって屋外広告の歴史を古く古代まで遡ることができるのは、とても感慨深いですよね。
現代の世界に目を移して見ると、日本にはなかなか設置の難しい超巨大屋外広告も、ニューヨークのタイムズスクエアや上海、タイのセントラルパークプラザなどに、多く存在しています。
筆者が面白いと感じた、タイムズスクエアにある屋外広告を2つ紹介します。
1つ目はこちらです。
2014年に「Google」がサッカーグラウンドの長辺と同等幅を持つ巨大ディスプレイを設置し、「Android」の広告を展開しました。ユーザーが作ったアンドロイドのキャラクターを実際画面に映すことができる仕組みになっていたそうで、その当時参加型の広告として用いたそうです。
(ガジェットギークWEBより参照)
実際の動きはこちらになります。(Google公式動画)
しかし、この広告のすごい点といえば、なんといってもその広告リース料!
大きさのダイナミックさはもちろんのこと、4週間で250万ドル(約2億9200万円)以上だそうです。
その金額の大きさに腰抜けしそうです、、。
また2つ目は、2017年にコカ・コーラ社の「世界初の3Dロボティクス広告看板」・「世界最大の3Dロボティクス広告看板」という2つの内容でギネス世界記録として認定された、3Dデジタルサイネージ広告になります。
下図の赤く囲んだ部分になります。
1,760枚の立方体で構成された約21×13メートルの巨大なLEDスクリーンは、6階建てのビルに相当するサイズです。そのスクリーンは立方体のデジタルサイネージによって構成されており、それぞれの動きがプログラムされ、独立した動きができる仕組みになっています。
少し分かりにくいかもしれませんが、下図の黄色で囲んだ部分に、凸凹があるのが見受けられるかと思います。
こちらが実際の映像になります。(コカ・コーラ公式動画)
正方形のサイネージパネルが幾重にも重なり、コントロールされながらリズミカルに動いていることがよく分かります。
迫力満点な動きと映像技術に目を奪われてしまいますよね!
終わりに
今回は屋外広告の歴史から学び、今日本で活用されている屋外広告の種類を見ながら、世界の屋外広告のトレンドも知ることができました。
何気なく目に入ってくる広告ですが、歴史の深さはもちろんのことその種類の多様さを改めて実感しました。
しかし、エスカレーターの手すり広告がどの立ち位置になるか、いまだに分からないなと、同時に感じました。
そのため、次回は屋外広告を取り入れることのメリットとデメリットについてまとめ、エスカレーターの手すり広告がどのような分類になるのかさらに検討することにしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
屋外広告士対策サイトWEB
株式会社ウエストポイントWEB
OOH総合情報サイトスペースメディアWEB
世界観光記WEB
屋外広告業の企業政策に関する研究論文
静岡技研工業株式会社WEB
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