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執筆者の写真編集部

下りエスカレーターが増えていることとバリアフリーの関係性


皆さま、単刀直入ですが、日々の階段の“上り”と“下り”、どちらのほうが大変だと感じていますか?


例えば階段ののぼりおりをする際、大変と感じるのは“上り”かもしれませんが、実は転倒などの危険が増すのは“下り”であることをご存知でしたか?


今回は日常気兼ねなく行っている昇り降りの動作に関する記事になります。


 

なぜ下りのほうが大変なのか

階段の昇り降りが疲れるというのは、ごく一般的な意見です。


高齢者、ハンディキャップのあるかたは段差を気にしながら歩くことも多いでしょう。

人の多い主要駅では、人の流れも気にしながら移動することもあるかと思います。

またお年を召すににつれ、疲れるだけでなく「怖い」という意見も増えていきます。


高齢者の多くがかかる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)という疾患では、上り階段は何とか利用できても、下りは痛みが強くてどうしても降りられないという症状が出ることが多いです。


また階段の傾斜にもよりますが、下り階段の着地の際には、おおむね、体重の6~8倍にも相当する負担が膝関節にかかります。

「階段を上る」という行為は、「筋肉をよく使う」ので疲れを感じやすいため、関節への負担が大きいように思えてしまうのですが、実際は「高低差のあるところから、ほぼ全体重をかけて足を落とす」という下り動作のほうが、はるかに関節への衝撃度は高いのです。


さらに下りのほうが自分の体重が加速につながりやすく、転倒に繋がりやすいのです。

膝を安定させるには太ももの筋肉などを働かせる必要がありますが、高齢者はこうした筋肉が弱く、さらに膝や腰に疾患がある方も多いため、下り階段への不安が生まれやすいのです。

(青山筋膜整体より引用


バランス感覚の衰えの影響

さらに、年齢を重ねるとバランス感覚も衰えてしまうことも分かっています。


歩行はバランスの消失と回復の周期的な繰り返しによって前進します。

それは片足立ちを繰り返す状態であり、その際倒れないように重心を移動させることで、前進するための推進力として利用します。


その歩行中の不安定な状態でも倒れないように姿勢と重心の移動をコントロールしているのが、バランス感覚です。


ですが加齢に伴いバランス感覚が衰えると歩行中に片足立ちを維持する時間が短くなり、歩幅が狭くなります。


さらに歩く時に瞬時に姿勢や重心の移動をコントロール出来ないので無駄な動きが増えて疲労することにつながり、歩く速度が遅くなってしまい、よりバランスが取りづらくなりま。


また年を取ると視力の低下や、眼瞼下垂(がんけんかすい)などで視野が狭くなったり、白内障や緑内障を発症するかたが多いことが分かっており、障害物を発見するのが遅かったり段差の踏み外し、足元の着地点を上手く把握できないことにもつながります。


上記のような身体の衰えや様々な要因により転倒の危険性が増し、

もともと身体に負担のかかる「下り階段」は、一層不安感も増長させてしまうのです。

(酒井医療株式会社より引用

(ふじたカイロプラクティックより引用


福岡市交通局の取り組み

歩行困難者等は上りより下りのほうが負担がかかることから、少しでも移動がしやすくなるようにと、2015年より下りエスカレーターを増やす取り組みをされている、福岡市交通局の施設課のかたにお電話でお話をうかがいました。


福岡市地下鉄には、2005年開業の七隈線は全駅のホーム階からコンコース階に上下のエスカレーターがあり、空港線と箱崎線の計19駅は、博多駅などの主要駅や1993年に開業した福岡空港駅・東比恵駅を除くと、2015年までエスカレーターが2基以上ある場合もすべて上りが設置されていました。


2015年当時は全184基あったエスカレーターのうち、約3分の2である120基が上りエスカレーターでした。


そして、バリアフリーの観点から、駅を利用する人のために、空港線・箱崎線においても、2基ある上りエスカレーターのうち1基を下りエスカレーターを切り替える計画を立て、2015年に空港線赤坂駅で試行を行いました。


試行においてトラブルなどの発生もなかったため、赤坂駅を皮切りに、2020年までに11駅分16基が上りから下りに切り替わりました。また、2015年以降エスカレーター自体を4基増設しており、2022年4月時点で全188基中106基が上り、82基が下りエスカレーターとなりました。


なお、福岡市地下鉄の全駅でホーム階から地上まで、エレベーターであがることができますが、少しでも多くのかたが利用しやすくなるように、エレベーターを始めとした昇降機の増設を引き続き検討していくとのことです。


日々利用者のために工夫がなされているのですね。


進む高齢化、寄り添う社会の実現を

人々の声を集め、近い将来のためにインフラ整備をバリアフリーの観点で変えていこうとする動きはとても素晴らしいものです。その一方でどういった対策をするのか、優先順位を定めたうえでどう進めていくのか、非常に判断の難しいものです。

65歳以上の人口が、現在28%に及んでいる日本社会(2020年時点)、

今後も高齢化は進んでいき、バリアフリーに関する知見や対策はより広く必要となっていくでしょう。


今まで移動手段でしかなかったエスカレーターですが、もはや日常の一部となったこの生活導線に着目することは、施設としても、利用するお客様としても、誰に対しても安全である社会の実現の一歩になるのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございました。


 

【参考文献】

・駅に下りエスカレーター続々 高齢者「下り階段は怖い」/朝日新聞デジタル

・上りより下り、高齢者のエスカレーター /中島勧先生コラム:東京大学政策ビジョン研究センター

・福岡市交通局WEB

令和3年版高齢社会白書全体PDF版 - 内閣府




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