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執筆者の写真編集部

【前編】エスカレーターのマナー向上を推進している東京都理学療法士協会へのインタビュー[協会の活動について]



はじめに

「エスカレーター、止まって乗りたい人がいる。」

このフレーズを街中で聞いたことはありますか?


こちらの写真のように、エスカレーターのピクトグラムがデザインされ、

「わけあってこちら側で止まっています。」という表記のされたマークを身に着けているかたをご覧になったことはありますか?


こちらは「東京都理学療法士協会」のエスカレーターマナーアップ推進委員会が行っている、エスカレーターの乗りかたに対するマナー向上の取り組みの一環です。


今回は以前より、様々な方面でご協力いただいている、「東京都理学療法士協会」のエスカレーターマナーアップ推進委員会事務局長である小林和樹様にインタビューいたしました。


弊社としても大変興味深いお話をボリューム感満載に伺うことができ、今回は2部構成となりました。


まず前編は東京都理学療法士協会さんの活動内容についての紹介です。


 


UD 2021年3月に、弊社も東京都理学療法士協会さん主催のシンポジウムにパネラーとして出させていただきましたが、その際はありがとうございました。その後、他にもエスカレーターに関する取組みはされていますか?

(シンポジウムの詳細は斗鬼正一文化人類学研究室WEBより参考


小林様(以後、小林さん) シンポジウムを開催したのは、2020年に新型コロナウィルスの流行により1年間ほぼ活動ができない中、シンポジウムを何とかウェブで開催しようという経緯がありました。


UD そうですよね、大変な時期でしたよね。


小林さん 2021年3月以降に関しては正直大きく動けてはいないですが、同年にオリンピック・パラリンピックがありましたよね。僕らの活動で大事にしていたことの一つに、日本に色々な人が来る時に、安全にエスカレーターが使えて、誰もが安心して過ごせる日本にしたいという思いがあったんですその際に、僕らの活動で大事にしていたことが色々ありましたが、日本に色々な人が来る時に、安全にエスカレーターが使えて、何より安心して動ける日本にしたいという思いがあったんです。なので、活動当初から2020年のオリンピックを目指して取り組んでおりました。その中で、オリンピック前に毎日新聞さんに2021年5月5日付で記事を出させていただいたんですよね。その記事を読んだ小学生が「いっしょに読もう!新聞コンクール」に応募して、そのコンクールで受賞したんです。あと2021年8月23日にも東京新聞に僕らの取り組みに関する広告を出しました。

(こちらが2021年度第12回いっしょに読もう! 新聞コンクール受賞作[NIE(教育に新聞を)活動]になります)


UD そうだったんですね。すごいですね。


小林さん 実際に2021年度は埼玉県のエスカレーターに関する条例制定があって、当時は今回みたいなインタビューを受けたりしていました。

(埼玉県の条例に関する弊社のコラムはこちら

UD なるほど。取材を受けることで社会へ発信していたのですね。


小林さん そうですね。広告を出したり、2009年ごろから2009年度から毎年行われている「エスカレーター『歩かず立ち止まろう』キャンペーン」に去年から我々も一緒に参加させていただいているので、実質的に何か活動したというのはあまりなかったですが、少しずつ色々な方面に参加させていただいています。あとは、道徳の教材や高校の家庭科の教科書高校の教科書とか家庭科の教科書とかに少し載せていただいたりとか。そういうことで水面下の活動が広がっていって、取り上げていただく機会が少しずつ続いています。

(エスカレーター「歩かず立ち止まろう」キャンペーンについての弊社コラムはこちら

UD そういう意味では以前から気になっていたんですけれども、東京都理学療法士協会さんって、特にその都民の福祉とか健康の増進を図るための公益法人かと思います。その中でエスカレーターに注目されたのは元々どういうきっかけでしたか。


小林さん どうして「エスカレーター」なのかと良く聞かれます。大きなきっかけとしては、僕らの団体でやっている学会です。理学療法士の治療の対象はものすごく幅広くて、病院に入院されているかただけじゃなくて、地域の高齢者やスポーツ領域でもプロから学生、障がい者を対象とします。ほかにも学校保健や、企業に入って腰痛予防などの産業リハビリまで

スポーツ領域もそうですし、障がい者スポーツ、学校保健とか、会社であれば産業的な腰痛予防とかで入ったりとか、色々なかたを対象としているんですね。

UD なるほど。

小林さん その中で学会において、パラリンピックにも出場されていて、現在の日本パラリンピアンズ協会会長でもあるパラリンピックにも出場して、2021年のパラリンピック団長も務められた、大日方邦子(おびなたくにこ)選手をお呼びして、講座をしてもらったことがあるんです。それが2015年ぐらいだったかと思います。


僕らは障がい者の支援をするっていうことを継続してやってきたのですが、そもそもそういう人たちを受け入れる社会を作らなきゃいけないっていうのも1つ大きなことなのかなと。障がい者を受け入れる社会を作るために、社会でどんなアプローチができるのか普段から考えていましたが、障がいがあったり、生活に不安があったり、怪我をしていても安心して過ごせるような街や、安全に過ごせるような街っていうのが一番大事なんじゃないかと大日方選手に提案され、僕らもハッとさせられたんですね。


その1つの例として声を上げていただいたのが、エスカレーターなんです。公共の場にあって、さらに公共性が高いものであるのに、乗ることが怖い人や不安に思っている人、なぜ片側しか立ち止まれないのだろうと思っている人がいるんですね。僕は病院で患者さん対応をしていて、エスカレーターの練習もするんです。階段とか、生活上歩くっていうことだけでなくて、買物や駅に行ったらエスカレーターがあって、ただでさえ歩くのを一生懸命やっているのに、動く床に乗るっていう不安であったりとか、自分のスピードとは違う物に乗るのは怖さがあるんですよね。


UD 確かにそうですよね。


小林さん 障害があるかたってちょっと外出するにも、エスカレーターの左側でレールを掴みたい人や、反対に右側じゃないと難しい人がいます。リハビリしてもなかなかうまくいかない方もできない人が一杯いるんです。そういうかたに僕らが無意識にルールとして左側片側に乗る練習をやっていましたが、本人が乗りやすいほうに乗る練習をするのって別に悪いことでもルール違反ではないんだと思ったんですね。

そうなると、そういったことが正当化されるのがすごく大事なのかなと思いまして。これをきっかけに、理学療法士として様々な人を対象にして、皆が不安なく過ごせるような社会をつくるのは我々の使命でもあるのかな、というのが1つのきっかけです。


UD そこからちょっと取り組んでみようと。

小林さん そうですね。スポーツ分野も支援しているので、大規模集客が行われるオリンピックの時期に向けて、ちょうど5年ぐらい前(2017年)から、誰もが安心して街中を移動できる日本ってかっこいい!とアピールしたかったというのもきっかけですね。

UD そうだったんですね。エスカレーターの安全な乗り降りだけが一番の目的じゃなくて、そういう障がいのあるかたが受け入れられる社会をつくるために、その1つの象徴的なものとしてエスカレーターを選ばれたということなんですね。

小林さん そうですね。街中に行こうとしても、ちょっとした段差とか世の中的にも排除されてきたり、バスやタクシーの運転手さんとかも乗り降りを手伝ってくれることが増えてきました。でも外出していると、エスカレーターの不便さだけ残っているという声があり、僕らもどうにか対応していきたくて。



UD 東京都理学療法士協会さんの想いがよくわかりました。今回いくつかお聞きしたいのですが、エスカレーターの安全に対する活動については、練馬区光が丘の施設のエスカレーターでのクリスマスのイベントがきっかけで、お付き合いが始まりました。また昨年、練馬区さんをご紹介いただきましたが、練馬区さんと東京都理学療法士協会さんは元から色々な活動を取り組まれていたんですか?

(弊社と練馬区さんとの共同の取り組みに関する弊社のコラムはこちら


小林さん きっかけというのが、たまたま協会内で2015年にそういう啓発活動をやりたいと声が上がって、2016年にこの推進委員会が発足して、実際に活動開始したのが2017年なんですよ。一番最初の活動場所が練馬駅前のところだったんですが、日本エレベーター協会さんに声掛けていただいたのと、学会がちょうど練馬区だったんです。その年の学会が練馬駅前の会場で、日本エレベーター協会さんのご協力をいただいて初めてのイベントを実施しました。

UD それは何の学会ですか?


小林さん 僕ら東京都理学療法士学術集会は毎年持ち回りで、都内各地で学会を開いております。活動を開始した2017年に練馬区で学会がありまして、その会場が練馬駅前のココネリホールという場所で、そこにエスカレーターがあったんですね。エスカレーターの安全について駅前で呼びかけたり、学会に参加する理学療法士にも意識を持ってもらいたくて、最初に練馬区を拠点として動き始めたというのがありました。その後光が丘の施設の前で路上でティッシュ配りをしたり、本当に地道ですがスタッフの若い力を集結させながら動いています。


UD 普段の業務がお忙しい中、皆さんで地道な活動を行っているんですね。

小林さん そういう繋がりがあって、光が丘の施設の前だけでチラシを配っているだけじゃなくて、様々な人を呼んだり、文教大学経営学部の新田教授ゼミの学生たちと一緒に活動する中でイベントを開催してみたり、グッズを作ったりしました。

UD シンポジウムを開催するのもそういう一環としてなんですね。


小林さん そうです。エスカレーター事業をやっている団体にこういうチャレンジをしてみようと声を掛けてみたりしました都内各所にエスカレーターがありますが、一番は駅の利用者に対してアプローチしたいんですよね。デパートとかスーパーってその場の雰囲気も相まって歩く人は少ない気がします。でも公共交通機関って人が多いですし、時間を省きたい人も多くいますから、エスカレーターを歩く人も多いんですよね。ただ、鉄道会社さんは大きいので、僕らみたいな小さな団体がいきなりアタックするよりも、地道な活動と実戦を積んでいくようにしています。


UD そうなると練馬区さんの存在は大きなサポートになりましたね。


小林さん 活動しているのを知ってくれていて、広報に載せてくれたり、色々な場面で取り上げて後押ししてくださるというのは、本当に心強いです。

そして社会に発信をするというところに関しては、活動をSNSやホームページで発信したり、気づいてくれたところに発信を協力していただいているのが主なところですね。今ももちろんですが、呼ばれれば結構なんでもやるって感じでしたね。例えば六本木ヒルズさんとの活動もそうです。


UD ジグザグ乗りとか試されたときでしたっけ?

(東京新聞「エスカレーター 歩かない考 右側立つ人には事情が」WEB記事より参照


小林さん そうですね。その時は六本木ヒルズさんの建物内で声掛けしたりしました。

活動が広がるのは、地道な活動によっての影響もありますが、せっかくなら広めるためのピクトグラムが欲しいと思い、エスカレーターの乗りかたについてのピクトグラムをキーホルダーにしました。それが実はTwitterでバズりまして。

(このコラムの冒頭で紹介した、「わけあってこちら側に止まっています。」という言葉が書かれたこちらのキーホルダーのことです。)


UD インパクトがあるというか、スっと入ってこみやすいピクトグラムですよね。あとフレーズがキャッチーですよね。

(メッセージ入りのキーホルダーと当時このキーホルダーを街中で見かけて投稿したかたのTwitterの紹介記事


小林さん ありがとうございます。この投稿には10万を超える“いいね”がついていました。この時から輪が広がって、これをきっかけにみずほ銀行さんとも一緒に活動したり、そういう他団体との活動が増えたのは、18年・19年ぐらいかなって思います。


UD そうだったんですね。そういう報道がされて、片側麻痺の方など、人によって想像以上に乗り降りが大変なのだと、色々なところで取り上げられていましたよね。

小林さん あの時期はそうですね。多分、あんまりそういう発信をしていた団体がいなかったのと、公共交通機関のかたがたは事故をなくしたいというのが主な考えなのが影響していたと思います。多様な人が乗れるようにしたいというのは、多分僕らが活動を始めたのが最初なのかなとは思います。

僕らは「止まって乗りたい人がいる。」っていう言葉をすごく大事にしているんですけれども、そこが伝わるといいなぁというのと、エスカレーターで止まって乗るというのが、先ほど言ったような序章でしかなくて、世の中にやさしい社会になればというのが一番ですね。


UD 練馬区の件は我々にとっても貴重な機会をいただいたなと思ってるんですけれども、我々は「ゆうどうマーク」という視線を誘導するしるしをデザインしていて。あれを知ったきっかけというのは、光が丘の施設での取り組みですか?

このしるしは転倒事故防止の観点で、JR東日本さんと特許を共同取得しておりまして、今回は練馬区役所でのプロジェクトに我々も一緒に参加させていただきました。我々を推薦いただいた経緯というか、きっかけも教えてください。


小林さん まず僕らの活動としては「止まって乗る」ということを重要視していました。UDさんから連絡をいただいて、実際にしるしが並んだラッピングを拝見する中で安全面への効果という観点で一緒に活動すれば、よりうまくいくのではと思いました。

UD そうでしたか。そもそも、エスカレーターのラッピング事業を行っている会社自体も少ないですしね。


小林さん 声がかかれば動くしかないっていう僕らの考えなので、むしろ声を掛けていただけるなんてチャンスです。僕らも病院勤めが基本なので、本業ではないところにどう踏み込むかっていうのは、すごく難しい。本当にパッションでやっている仕事だと思ってます。なので、声を掛けてくれるところは熱量を持ってきてくれてると思っているので、そこと一緒にやりたいんです。僕らは限られた時間で形作って、発信して、人々に気づいてもらうことが大事なので、今回みたいにインタビューをお受けしたり、こういうことを積極的にやるしかないというモットーです。損得はあんまり考えてなくて、ちょっとでも活動が広がって、気づいてくれる人が増えるためにという想いです。


UD  そういう考えなんですね!弊社としても、すごくありがたいです。

小林さん あとは公益法人という立場も重要視してますね。


UD そのフットワークの軽さというか、間口の広さっていうのは公益法人ならではで、広く公のためにというポリシーを持つからこそ、そういう柔軟な姿勢を保てるんですね。どうしても営利企業だと、どことどう付き合うかなどはフラットな感じでは難しいですよね。


小林さん そうですね、そこら辺関係ないかもしれません。ただ、事業とかやるときに予算には限度があって、設備の用意とかは難しいのですが、僕らの企画や発信力を活用したいというところがあれば、色々な団体と一緒にやっていきたいと思っています。


 

おわりに

今回は東京都理学療法士協会の小林様へのインタビューの前半部分をご覧になっていただきました。


どうしてエスカレーターの安全な乗りかたについて啓発活動をしているのか、またどういう思いで活動しているのかがよく分かりました。

次回は理学療法士として勤務している小林様だからこそ、「エスカレーターで転ぶ原因は何か」、そして「転びやすい高齢者のバランス感覚について」を語っていただきました。


弊社としても大変興味深く、さらに教えていただいたことについて追及したくなる内容でした。乞うご期待ください。


小林様への取材記事の後編もどうぞお楽しみに!

 

参考文献

おたくま経済新聞2019年6月21日「知ってほしい エスカレーターの『わけあってこちら側で止まっています』」WEB記事

BuzzFeedNews2019年10月1日「エスカレーターは登らないでほしい。左半身麻痺の女性がツイートした理由。」WEB記事

リガクラボ2019年10月9日「エスカレーターを安全な乗り物にしよう!「親子で学べる安全・安心な乗り方教室」開催(10月27日@練馬)」WEB記事

リガクラボ2019年12月11日「子どもたちに思いやりのこころを育む「安全・安心なエスカレーター乗り方教室@練馬」レポート」WEB記事

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイトPT-OTーST.NET2020年12月WEB記事

東京都理学療法士協会 エスカレーターマナーアップ推進委員会Facebookページ






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